ジョイナス最後の戦い

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ありがとう、高見侑里アナ/裏世界ピクニック/他

ありがとう、高見侑里アナ

「美人は3日で慣れる」という格言がある。これは明らかに間違っている。なぜなら私は3日どころかこの3年間「BS11競馬中継」のMCを務めた高見侑里アナに慣れることができなかったからだ。

高見アナを見ていると胸が苦しくなる。ゲスト解説者の目を見つめながらレース展望を聞く高見アナを見るたびに呼吸が乱れてしまう。女性声優は結婚するとCDの売り上げが下がるというが、私の胸の鼓動は高見アナが結婚しても一向に治まらなかった。

井森美幸くらいがちょうどいいんだ」と誰かが言った。「井森美幸は美人だ。でも井森美幸を見て胸が苦しくなることはないだろ?」‥‥確かに。でも、レオタードを着て踊っていたのが高見アナなら?レオタードを着て踊る高見アナを見たことがないから断言はできないが、おそらく「胸が苦しい」では済まないだろう。死因は高見アナのレオタード。そんな人生の最後もアリかもしれない。

しかしである。私が人生の最後を迎える前に、高見アナの番組卒業の日がやってきてしまった。結婚発表あたりから覚悟はしていたが、覚悟は寂しさを一切紛らわせてくれなかった。ゲスト解説者に自己投影し、高見アナにレース見解を聞いてもらう妄想がもうできなくなると思うと、心が鈍色に染まっていく。師走の空は厚い雲で覆われて、光を遮断しているようだった。

───そして、その時が来る。

共演者から花束を受け取ると、高見アナは人目を憚らずに泣いた。高見アナの涙を見て、私は自分の脳の一部が熱を帯びているのを感じた。脳内物質がとめどなく分泌され、全身の筋肉が弛緩していく。湯船に浸かった時、あるいは誰かに褒められた時のような気分だった。心身の予想外な高揚に、悲しみに沈んでいたはずの私は困惑する。

茫然とする私に3年間高見アナと共演していた高田秋が追い打ちをかける。彼女もまた泣いていた。「最初の方は仕事が出来なくてスタジオに行くのが辛かった。でも侑里ちゃんに会いたくて、侑里ちゃんに会うためにスタジオに行っていた」と声を上ずらせながら想いを語る。

互いに瞳を潤ませながら見つめ合う高見アナと高田秋「侑里だけに百合かよ」と言わずにいられなかった。そんな寒い発言でもしないと頭がおかしくなりそうだった。いや、既に私は手遅れだった。エンドルフィンが脳内で大量に製造され、熱が神経を通じて全身に伝達されていくような感覚を覚えた。気が付けば寂寥感はどこかに消え去っていた。人は死ぬ間際に脳内麻薬物質を大量に分泌させ、他幸感の中で息を引き取るという。私は死んだ。高見アナが美人過ぎて3年間競馬中継を胸を苦しめながら見ていた私は死んでしまったのだ。

今の私は高見アナから啓示を受け、生まれ変わった新しい私だ。高見アナからの啓示はただひとつ。「百合を見なさい。侑里だけに」。

ありがとう高見アナ。「やがて君になる」を見るよ。実はまだ見ていないんだ。

裏世界ピクニック 


『裏世界ピクニック』特別PV

最近ハマっているのが「裏世界ピクニック」。2人の女子大生が、オカルト現象が渦巻く「裏世界」を探索するという物語である。

www.ganganonline.com

興味を持ったきっかけは水野英多が描いているコミカライズ版。「スパイラル~推理の絆~」が大好きだったので水野英多の名前と絵に懐かしさを感じたし、ヒロインが眼鏡っ子だということにも興味がひかれた*1ガンガンオンラインのアプリのコインがインストール時からほぼ手つかずになっていたので、意を決して最新話まで読んでしまった。そして続きが気になったので原作のノベルスも購入した。原作は現在4巻*2まで発行されている。

「裏世界ピクニック」は表向きは「くねくね」「八尺様」といったネットロアを題材としたホラーSFだ。ただ、読み進めていくと異世界探検や恐怖体験ではなく、ヒロイン2人の百合に目が向いてしまうようになる。

「裏世界ピクニック」の主人公は眼鏡っ子女子大生の紙越空魚かみこしそらをだ。空魚は人との関わり合いを避ける孤立主義者だが、「裏世界」で出会った金髪美少女・仁科鳥子にしなとりことなぜか気が合い、やがて「鳥子のいない私の人生なんて、もう考えられない」というまでに惹かれていく。しかし鳥子は「裏世界」で失踪した友人・閏間冴月うるまさつきに執着していて、空魚も嫉妬という形で冴月を意識するようになる。やがて鳥子は空魚のことも大切な存在とみなすようになるが、他人の気持ちに疎い空魚にはそれがなかなか伝わらない。2人のすれ違いが生み出す不安感が百合のスパイスとなる。

読者の不安感を煽るのは人間関係だけではない。「裏世界」の怪奇が空魚と鳥子に絶え間なく襲い掛かる。とりわけ面白いのが冴月の扱いで、2人の冴月への執着が「裏世界」の怪奇として顕現し空魚たちの脅威となる様は百合的な意味でもホラー的な意味でもスリルがある。

空魚たちは「裏世界」の怪奇によって命に関わるような恐ろしい目に遭いながらも、2人きりの異世界固執する。傍目から見れば自殺志願的で正気とは思えない。正気ではない関係に付き合ってくれるから、より相手を愛おしく思える。気を抜けば存在を飲み込まれかねない「裏世界」にいるからこそ、相手に強く執着できる。空魚と鳥子が織りなす百合とホラーのシナジーには心も体も震えあがるばかりだ。

ゆゆ式の記事でも書いたと思うが、個人的にはノーストレスな作品よりも、ある程度の不穏感を添えて人間関係を描いた作品の方が好きだったりする。そうはいってもあまりにも不穏すぎると私は耐えきれずに逃げ出してしまうのだが、「裏世界ピクニック」に関しては許容範囲だった。近頃流行り(?)のパニックホラー作品にありがちなゴリゴリの露悪性がないから、人が死んだり奇形化するというショッキングな描写があっても耐えられるのだと思う。

長々と「裏世界ピクニック」について語ってみたが、結局この作品のどこが一番好きかというと、陰キャ眼鏡っ子ヒロイン・紙越空魚の存在に尽きる。

空魚の生い立ちは壮絶だ*3。それにもかかわらず自分の過去を「大したことがない」と言い放つ、ちょっとズレたキャラクターである。ただ悲惨な過去に対する彼女の価値観はカッコいい。

「自分のことをかわいそうな被害者と思っている限り、私はあいつらに人生を支配され続ける。だから、考えを改めたの。あいつらは私の人生になんの関係もない。私の主導権は私のものだって。それを邪魔してくるなら、単純に、全部壊してやるだけだって」

(ファイル9 ヤマノケハイ「裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ 」より)

人は「被害者」の立場に甘んじたくなるもの*4。だから「被害者をやめる」という発想に至れるタフさには自分としては憧れを抱いてしまう。

しかし空魚のタフさは鳥子の存在によって大きく揺らいでしまう。

「空魚には……関係ないでしょ」

「はあぁ!?」

私は思わず大声を出した。

「もう最悪だよ鳥子、今のは最悪。あなたこそ私の人生引っかき回しといて、一体何言ってるの。関係ないとか通らないからね。鳥子のくせに、子供みたいなこと言わないで」

(ファイル4 時間、空間、おっさん「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」より)

裏世界の彼方に消えようとする鳥子に対し、空魚は自分は鳥子によって人生を引っかき回された「被害者」であることを主張する。そして「責任を取れ」と言わんばかりに「加害者」である鳥子を引き留める。捨てたはずの被害者性をわざわざ拾い直してまで、鳥子に人生の主導権を握られていることを容認した空魚。モットーに背いてまで、縋りつきたい誰かがいる。こんな眼鏡っ子が見たかった。ありがとう。

ただ誤解をしないでほしい。空魚は「被害者」に戻ったわけではない。鳥子は空魚に「共犯者」という概念を持ちかける。一つの罪を共有する、この世で最も親密な関係。しかしこの作品は「共犯者」という2人の関係すらも脅かす。女と女。だから愛し合えないという理屈は存在しない。2人は「共犯者」という地平に留まるのか。それとも遥か先に踏み込んでしまうのか。今後も目が離せない作品である。アニメ化希望だ。

細江純子の告知

スナックズンコちゃんねるが今夜(1/25)更新されるらしい。それよりも驚くべきは、細江純子が自身のツイッターアカウントで告知をしたことだろう。

これまで細江純子は自分のツイッターアカウントでスナックズンコちゃんねるの告知を全くしなかった。7万のフォロワーがいるアカウントで告知をしないのはさすがにもったいない。「YouTube告知しませんか?」とリプライしたくて数か月間やきもきしていた*5が、これでようやく胸のつかえがおりた。

個人的にはスナックズンコちゃんねるは編集した短い動画が面白いと思う。ただ再生数が多いのは1時間超のレース予想動画だ。予想は自分でしてナンボという考えの人間なので、「そんなに人の予想が聞きたいか?」と思うわけだが、たしかに細江純子トレセン情報は聞いて損はないかもしれない。ただ細江純子の本性はシモネタ大好き下品ババァなので、そのことを忘れないために世の皆様にはシモネタ特集もちゃんと見て欲しいと思う次第である。


【ズンコの脱線特集パート2】

*1:筆者は眼鏡っ子が大好き

*2:コミカライズ版は2巻の最初の章に突入している。

*3:どんな生い立ちなのかは読んでからのお楽しみ。

*4:「被害者」は他者からの哀れみを受けられる強い立場だ。ただ空魚は他人の気持ちに疎すぎて、自分が哀れまれていることを自覚できていない節がある

*5:筆者は信仰上の理由で有名人アカウントにリプライをすることができない。