ジョイナスのカラオケBOX

アサヒ芸能で連載中の「ホソジュンのアソコだけの話」の書籍化、ドラマ化、もしくはアニメ化を願うだけのブログです。

サットレ(里崎SSスレ)考察

倒錯的でおぞましい何か

サットレの初出は2009年の8月14日。野球が夏季五輪の新種目から事実上落選し、名優・山城新伍の訃報に悲しみの声があがった日の深夜に、身の毛がよだつスレッドがなんJに立てられた。

里崎「本番はNGやから……」

1 名前:風吹けば名無し 投稿日:2009/08/14(金) 23:26:41.45 ID:GwBq1CpK
小谷野「ふん、下の口は正直だがな」
里崎「いやや、そんな事言わんといて…」
小谷野「びしょびしょに濡れてるくせによく言うぜ。おら入れんぞ」
里崎「あかん、ゴムしてへんやん!…あぅっ」
小谷野「お前、処女だったのかよ。すげぇ、しまるぜ」
里崎「いやや、痛いよぉ。初めては好きな人とって決めてたのに…」
小谷野「そんな事言って感じてんだろ?」
里崎「あん、そ、そんなっ…こと…ないぃ!」
小谷野「おら、声出してよがっていいんだぜ!」
里崎「ほんまっ、あかん!…っいいよぉ!小谷野のちんぽいいよぉ」
小谷野「へっ正直になりやがったな。おら、だすぞ!」
里崎「あ、あかん!中はあかんよ!?あぁっ!はやとぉおおおおおおお!」

http://live23.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250260001/

目を疑うような内容だ。悪びれずに描かれたポルノ的な男尊女卑に、良識的な人間なら眉をひそめるだろう。しかしながらこのスレッドには凌辱された女性は存在しない。交接しているのは現役プロ野球選手(当時)の里崎智也と小谷野栄一で、ヘテロセクシャルな欲望を投影する余地はほとんどない。ロッテの正捕手・里崎智也をまるで女性のように扱い、女性にそうするかのように恥辱するという内容に、プロ野球選手への冒涜という言葉だけでは言い表せないくらい倒錯的でおぞましい何かを覚える。これが後にサットレと呼ばれ、なんJに広く認知されるようにネタスレッドの初出だ。

里崎「本番はNGやから……」」と題された悪鬼が投下されてから約30分後、日付をまたいだ8月15日の0時3分に、再び魑魅魍魎のようなスレッドが投下された。

里崎「小谷野……しよっか?」
1 :風吹けば名無し:2009/08/15(土) 00:03:41.51 ID:900H2ihl
小谷野「サト、もっと自分を大事にしたほうがいいよ…」
里崎「ええんよ、あの人は私に振り向いてくれへんから……」
小谷野「サト、ほんと……ごめん!」
里崎「小谷野……」
小谷野「おれ、自分を抑えられないよ」
里崎「ええんよ。ね、きて?」
小谷野「サト、ごめん!」
里崎「あぅっ!あぁ……小谷野、ええよ。めっちゃ気持ちいい」
小谷野「サト、おれ、すげぇ幸せだよ」
里崎「あぁっ…!うんっ、うちら、繋がってっ、るん…やね」
小谷野「サト、おれがあいつの事なんて忘れさせてやる!うっ、出る!」
里崎「あっあっ!あかん、うち、やっぱり忘れられへん!はやとぉおおおおおお!」

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250262221/

今度は凌辱から一転し、悲恋のようなものが描かれる。不毛な恋を諦めようと他の男に抱かれるも、あの人のことが忘れられない──いかにもメロドラマにありがちな内容である。しかしながらここで性行為に及ぶのもまた、2人の男性プロ野球選手である。作者は何を考えて、このようなスレッドを立てたのだろうか。作者の人となりに迫っていこう。

サットレの創始者

里崎「小谷野……しよっか?」」を立てたID:900H2ihlはどういった人物だろうか。

里崎スレのまとめウィキを調べてみたところそのアーカイブからとんでもない事実を発見した。ID:900H2ihlは1日にサットレを「里崎「小谷野……しよっか?」」を含めてなんと10スレも立てていたのだ。

病的な創作意欲を持つ人間は一日限りの活動では満足しない。ジョイナスレの創始者がそうであったように、彼もある程度の期間はスレを立て続けたのではないだろうか。そう考えてまとめウィキを漁り、初期サットレの筆者のIDを地道に検索する。

──網に獲物がかかった。

夜中だから今までの里崎スレ放出する

30 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:02:36.07 ID:Gxt+qZ7Z
>>1は作者?

37 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:06:56.86 ID:3liN8zO5
>>30
そうやで

これで大体全部のはず
>>5には申し訳ないけど、最近途中を読みたいという人がちょくちょくいたからまとめてみた
改めて見るとマジキチだな

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253900871/

2009年の9月26日に立てられたサットレの筆者ID:3liN8zO5が、同日に「夜中だから今までの里崎スレ放出する」というスレを立てていた。そのスレッド内で彼は自分がサットレの創始者だと認める発言をしていたのだ。

とはいえ彼の発言を容易に鵜呑みにしていいものだろうか。「サットレの創始者」を騙っている可能性がないわけでもない。慎重な検証が必要だろう。

そう考えてID:3liN8zO5の人となりを知るべく他の書き込みを確認したところ、同日のわしせんに書き込んでいることが判明した。 

わしせん8 頼むよ

57 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 16:55:47.52 ID:3liN8zO5
ちょwwwwww

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253951410/57

野球実況文化に疎い人の為に説明しよう。わしせんとは楽天ファン専用の実況スレッドのことだ。楽天ファン専用の実況スレッドに書き込んでいる以上、彼が楽天ファンであることは明白である。

また他のスレでは彼が楽天ファンになった経緯も語られている。元々は横浜ファンだったようだ。彼の書き込みは、楽天に対する言及よりも横浜に対する愚痴の方が多かった。

楽天ファンってさ

27 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 04:03:29.23 ID:hRu8xNxa
横浜が余りに弱くてたえられず…

34 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 04:14:02.84 ID:3liN8zO5
>>27
同じだw
小学生でマシンガン打線経験すると今の横浜なんか見てられない

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253904087/

そしてID:900H2ihlがサットレを乱立した2009年8月15日のわしせんのログを調べてみたところ、同IDが楽天戦を実況している姿が確認された。

わしせん 
729 :風吹けば名無し:2009/08/15(土) 18:38:53.07 ID:900H2ihl
リンデンいいなぁ
バットかなり前に向けるのってメジャーでよく見るけど流行ってんのかな

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250325365/729

わしせんへの書き込みを根拠にID:900H2ihlID:3liN8zO5であると言い切るのはさすがに苦しいかもしれない。ただ、その蓋然性は非常に高いのではないだろうか。というか、キチガイスレの創始者を好んで自称したがるのは本人くらいでしょ‥‥。したがってID:900H2ihlID:3liN8zO5サットレの創始者と決めつけても何ら問題はない。

その狂気はネタ化する

サットレの創始者はどのようにサットレを創作していたのだろうか。先述のスレッドで興味深い発言をしていたので取りあげよう。

夜中だから今までの里崎スレ放出する

44 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:15:28.15 ID:82c4ltEZ
最初は気持ち悪かったが徐々に笑えるようになってきた。これが慣れか

48 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:17:01.17 ID:3liN8zO5
>>44
気持ち悪いってレスが多かったからライトな感じにしたんだけどね
後半になるにつれてネタ部分の比率が増えてると思う

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253900871/

「後半になるにつれてネタ部分の比率が増えてる」と語る創始者。本当だろうか?

まずは彼の処女作である「里崎「本番はNGやから……」」、2作目の「里崎「小谷野……しよっか?」」を改めて見てみよう。

里崎「本番はNGやから……」

1 名前:風吹けば名無し 投稿日:2009/08/14(金) 23:26:41.45 ID:GwBq1CpK
小谷野「ふん、下の口は正直だがな」
里崎「いやや、そんな事言わんといて…」
小谷野「びしょびしょに濡れてるくせによく言うぜ。おら入れんぞ」
里崎「あかん、ゴムしてへんやん!…あぅっ」
小谷野「お前、処女だったのかよ。すげぇ、しまるぜ」
里崎「いやや、痛いよぉ。初めては好きな人とって決めてたのに…」
小谷野「そんな事言って感じてんだろ?」
里崎「あん、そ、そんなっ…こと…ないぃ!」
小谷野「おら、声出してよがっていいんだぜ!」
里崎「ほんまっ、あかん!…っいいよぉ!小谷野のちんぽいいよぉ」
小谷野「へっ正直になりやがったな。おら、だすぞ!」
里崎「あ、あかん!中はあかんよ!?あぁっ!はやとぉおおおおおおお!」

http://live23.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250260001/

処女の里崎は強引に体の関係を迫る小谷野を拒み切れず、快楽に堕ちていく。そして快楽へのせめてもの抵抗に、想い人である坂本勇人の名前を叫ぶ。凌辱ポルノのテンプレ的な内容を、プロ野球選手に演じさせるというおぞましさが元祖サットレの全てである。

里崎「小谷野……しよっか?」
1 :風吹けば名無し:2009/08/15(土) 00:03:41.51 ID:900H2ihl
小谷野「サト、もっと自分を大事にしたほうがいいよ…」
里崎「ええんよ、あの人は私に振り向いてくれへんから……」
小谷野「サト、ほんと……ごめん!」
里崎「小谷野……」
小谷野「おれ、自分を抑えられないよ」
里崎「ええんよ。ね、きて?」
小谷野「サト、ごめん!」
里崎「あぅっ!あぁ……小谷野、ええよ。めっちゃ気持ちいい」
小谷野「サト、おれ、すげぇ幸せだよ」
里崎「あぁっ…!うんっ、うちら、繋がってっ、るん…やね」
小谷野「サト、おれがあいつの事なんて忘れさせてやる!うっ、出る!」
里崎「あっあっ!あかん、うち、やっぱり忘れられへん!はやとぉおおおおおお!」

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250262221/

2作目も同様だ。プロ野球選手がメロドラマのような情事に耽っていてる。これもまたおぞましい。

まともな人ならサットレに嫌悪感を抱くはずだ。プロ野球選手の尊厳をカジュアルに損ねる内容に、怒りや恐怖を感じるだろう。また、人によってはホモフォビアな感情を刺激されるかもしれない。

嫌悪によって生まれたストレスを人はどう処理するだろうか。その1つの答えが「笑い」ではないかと私は考える。「最初は気持ち悪かったが徐々に笑えるようになってきた。これが慣れか」という書き込みがあったが、これは読者がサットレの推し出す嫌悪感に対し、「笑う」というストレス回避を学習した証左といえるだろう。

ところが創始者は、嫌悪感を煽ってバグ的に笑いを誘うというスタンスを続けなかった。先述した通りに「ネタ部分の比率を増や」す方向性にサットレを転換させていく。例をあげていこう。

里崎「今日ははやとと勉強や♪」
1 :風吹けば名無し:2009/08/18(火) 00:33:21.17 ID:W3GgRK+y
坂本「金本先生の問題は難しいな…。えーと、次の中から猛虎魂を持った選手を選びなさい、か」
里崎「①中島裕之②田中将大③菊池雄星。な、なにこれ?わからへんわ」
坂本「あ、これひっかけだよ。正解は全部だね」
里崎「え…。全部なん?うち、解なしかと思ったわ」
坂本「あ、もうこんな時間だ。そろそろ解散だね」
里崎「そやね、ほな、またね」
坂本「うん、じゃあねー」
里崎「久しぶりにはやとと一緒にいれて楽しかったわ……って小谷野、なんでおるん!?」
小谷野「試験勉強とはいいご身分じゃねーか。てめぇはフェラの勉強がお似合いだろうが!おら!」
里崎「な、なにゆうて…んぶっ!んぐっ、んぅ!」
小谷野「これがフェラのやり方だ、覚えとけ!おら、だすぞ!」
里崎「んぐっ!……ぷはっ、はぁはぁ…。げほっ、げほっ!あかん、めっちゃくるしい……はやとぉ」

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1250523201/

この作品は導入に猛虎魂ネタが使われている。ネタの比率を増やすため、既存の野球ネタを取り入れるというアプローチが試みられているのだ。「正解は全部」という解答には思わずクスリとさせられた。

ただこの作品に関して真に注目すべきなのは神出鬼没な小谷野の登場シーンである。「里崎「本番はNGやから……」」そして「里崎「小谷野……しよっか?」」では冒頭から小谷野が登場し、終始里崎と小谷野の絡みだけで作品は終わる。途中で小谷野が登場する形が提示されたことにより、サットレの可能性は大きく広がっていくこととなる。

里崎「電気代高ッ!」
1 :風吹けば名無し:2009/09/15(火) 21:14:43.08 ID:rVKRQHTC
坂本「わ、サト。それ使いすぎだよ」
里崎「うち、そんなにつこうてへんと思ったんやけどなぁ……」
坂本「夏場はエアコンの使いすぎに注意しなくちゃね」
里崎「今年の夏は涼しいと思ってたけど、ついつこうてしもうたんかなぁ」
坂本「気をつけたほうがいいよ。体にも悪いしね。じゃ、また明日ね」
里崎「おおきに、はやと。ほなな。……って家ん中、何で涼しいん!?エアコン付けっ放しやったんかな」
小谷野「よう、サト。お前の部屋すぐ熱こもるなぁ」
里崎「こ、小谷野!?何で人の家にっ!?もしかして毎日おるん!?」
小谷野「おう、俺んち、エアコン無いからな。快適な別荘ってとこかな」
里崎「馬鹿な事言わんといてっ!あんたのせいで電気代大変な事になってるんやで!?あんたが払ってや!」
小谷野「じゃあ、お前を風俗に売った金で払ってやるよ。おら、ついて来い!」
里崎「やっ、やめっ!痛いっ!髪引っ張らんといてぇ!はやとぉおおおお!」

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253016883/

里崎邸の電気代が高い、という点から話題がスタートし、坂本とのやりとりの後に里崎は家の中が涼しいことに気付く。そして小谷野が里崎の部屋に居座ってエアコンを勝手に使用していたことが明らかになり、最後に里崎は小谷野によって風俗に売り飛ばされる。インモラルな色合いが薄れ、起承転結がはっきりとした作風が成立している。

一番の見どころは小谷野の登場シーンである。「里崎「今日ははやとと勉強や♪」」で垣間見せた小谷野の神出鬼没な一面がより強調され、得体の知れない印象を抱かせる。小谷野の登場シーンは後々サットレの見どころとなり、コーヒーフィルター回大腸回のような非科学的な方向に発展していく。

里崎「ライブやるでー」
1 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 02:12:17.03 ID:3liN8zO5
小谷野「初の単独ライブだからインパクトのある事やらないとな」
里崎「せやなぁ。でも、どんな事やったらええんかな」
小谷野「決まってるだろ。お前はこれを突っ込んだまま歌うんだよ」
里崎「ちょっ!?えっ、それロータ…あぁああああんっ!!!」
小谷野「おら、客が待ってるから行くぞ!」
里崎「あぁっ、待ってぇな!……うぅ、もう戻れへん…」
西村「うひょぉおおおお!サトぉおおおお!」
里崎「みんなぁ!来てくれておおきにー!ほな、一曲目行くでぇ~!」
小谷野(へへ、行くぜ。スイッチオン!)
里崎「ひぁっ!?だっれーっ、よりも、んっ、つよく…あんっ、いさましく、あぁっ!」
西村「な、なんて官能的な歌い方なんだ…!勃起を禁じえない!」
里崎「ねーっきの、あぅ、うずが…あかん、もう耐えられへん…イッてまうっ!はやとぉおおおお!

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253898737/

小谷野にローターを仕込まれた里崎が客の前で歌うという内容である。これと似たようなネタ*1を後に渡辺直美が「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」の七変化企画で披露していた*2。人気芸人のネタを先取りした発想力には頭が下がるばかりである。

インモラルな方向性は以前と変わらないが、西村*3という第三者を用意することで作品は従来にない広がりを見せることとなる。里崎と小谷野のホモセクシュアルな関係を笑うしかなかった読者は、官能的に歌う里崎に性的に興奮する西村という新たな笑いどころを提供される。メインの3人(里崎・小谷野・坂本)以外で笑いをとるという試みは、後々描かれるバス回で大成することとなる。

さて、取り上げたのはわずか3スレッドだが、十分にサットレ創始者のユーモア、創意工夫が伝わったのではないだろうか。

ネタスレは発展の余地があるものほど長続きすると自分は考えている。最初は本文に「てすつ」としか書かれていなかったカッスレがいい例だろう。サットレがネタスレとして比較的長く愛されたのも、創始者がこのように直々に可能性を模索し、他のサトザキストたちに示したことが大きいと自分は考える。

書き手心理を考察する

夜中だから今までの里崎スレ放出する

44 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:15:28.15 ID:82c4ltEZ
最初は気持ち悪かったが徐々に笑えるようになってきた。これが慣れか

48 :風吹けば名無し:2009/09/26(土) 03:17:01.17 ID:3liN8zO5
>>44
気持ち悪いってレスが多かったからライトな感じにしたんだけどね
後半になるにつれてネタ部分の比率が増えてると思う

https://live23.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1253900871/

創始者の発言に再度注目する。彼は「気持ち悪いってレスが多かったからライトな感じにした」と語っている。つまり創始者は読者の声に屈し、露悪的な内容だけで勝負することを早々と諦めたのだ。

仮に創始者が「気持ち悪い」を追求する道を選んでいたとすれば、彼はサットレを書き続けることができなかっただろう。人々に嫌悪感を与える創作というのは、受け手だけでなく、作り手にもストレスがかかる。中には書きたくておぞましいものを書く人間もいるだろうが、比較的まともな感性の人間の場合はそうでもない。おそらくサットレの創始者は後者だったのだろう。当初のサットレが自分の性に合わないものと内心分かっていたからこそ、ネタの比率を増やす方向性に舵を切ったのではないだろうか。読者の「気持ち悪い」というリアクションは彼にとってある意味「助け船」だったかもしれない。

愛と憎しみとネタスレ

そもそもなぜ里崎と小谷野と坂本なのだろうか。なんJ用語集には以下のような説明が書かれていた。

坂本が里海(モデル)との交際を報じられた際、誰かが「『里海』が『里崎』に見える」と発言したことがきっかけとなり「里崎が坂本の彼女である」という設定のスレが立てられるようになった。
ちなみに坂本の出身小学校が「昆陽里(こやのさと)小学校」であることから、何の関係もない小谷野も巻き込まれてしまった。

里崎スレ - 新・なんJ用語集 Wiki*

如何にもそれっぽい説明ではある。ところがこれらの記述には出典がない。さすがなんJ民。

出典元のない情報を鵜呑みにするわけにはいかない。仕方がないので自分でソースを探ってみたが、小一時間を費やしても見つからない。何時間かけても見つかる気がしなかったので渋々断念した。

ついでに坂本と里海(モデル)の交際発覚時のなんJの反応も調べようとしたが、こちらも発見できなかった。その代わり、当時芸スポに立てられたスレッドは発見できた。余談だが、里海(モデル)は俳優の溝端淳平との交際も報じられている。

【野球】G坂本、「通い愛」フライデーに撮られた!『With』の人気モデル、里海(さとうみ)(23)とのデートを激写

11 :名無しさん@恐縮です:2009/07/24(金) 05:38:21 ID:miSD0ivG0
里崎に見えた

47 :名無しさん@恐縮です:2009/07/24(金) 05:54:15 ID:nJIfR19jO
里崎かと

https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1248381296/

芸スポでも里海を里崎と空目した人たちがけっこういたようだ。

仮に上記のなんJ用語集の説明が正しいとしよう。「里海が里崎に見えたこと」と「坂本の出身小学校が「昆陽里(こやのさと)小学校」であること」にこじつけられてサットレが生み出されたとしよう。それでも解せないことが1点だけある。動機だ。サットレの創始者は何を思ってサットレを生み出したのだろうか。

カッスレは強い憎悪によって世に生み出された。最初のカッスレ「巨人小笠原、国会議事堂前で性器露出して逮捕。」には本文はないが、スレタイから「金に釣られて巨人に移籍することは国家権力を侮辱するに等しい反道徳だ」という歪な正義観が伺える。本文がなく、ネタとして洗練されていない分、「正義」に反した小笠原道大への憎悪が剥き出しになっている。まるで性器を露出するかのように。

「高木が叩かれて可哀想だから愛されチンポキャラにしたい」といって生み出されたジョイナスレも、その背景には当時の中日ファンの球団に対する憎悪が見え隠れする。落合博満の解任を皮切りに球団への不信感が募り、さらに新監督・高木守道に憎悪の矛先が向けられるという経緯がなければ、ジョイナスレは間違いなく誕生しなかっただろう。

しかしサットレはどうだろう。里崎智也と小谷野栄一に憎まれる謂れがあるのだろうか。楽天ファンの創始者からしてみれば、2人はライバル球団の主力選手である。だからといって、強く憎むことができるのだろうか。

里崎に関していえば、思い当たる節がないわけでもない。2009年の8月2日の東北楽天戦で、里崎は当時楽天に所属していたトッド・リンデンとひと悶着があり、乱闘寸前の騒ぎにまで発展している。リンデンといえば素行不良のトラブルメイカーとして有名だったが、この件に関しては里崎が彼の胸元を攻めるようなリードをしたことが発端である。楽天ファンの創始者が里崎に腹を立てたとしても不自然ではない。創作でオカマ扱いして凌辱しても心が痛まない程度には里崎に悪い印象を抱いていたのかもしれない。

一方、小谷野に関しては憎悪を抱く余地はほとんどないように思われる。2009年の8月までに彼が楽天ファンに恨まれるようなエピソードは見つけられなかった。それにもかかわらず小谷野はサットレにおいてレイプ魔扱いされている。これはカッスレにおけるカッスにほとんど匹敵する扱いである。

小谷野がサットレに登場する理由が「坂本の出身小学校が「昆陽里(こやのさと)小学校」である」というこじつけでしかないとすれば、そこにあるのは憎悪というよりはカジュアルな露悪性だ。悪意の背景には強い負の感情があるものだが、小谷野の扱いに関してはそれがない。カジュアルな服装のように気軽に着脱可能な、重さを持たない悪意としかいいようがない。こうした軽い悪意が歓迎され、面白がられるのがインターネットである。

そもそも、サットレの創始者の書き込みを見る限り、彼が強い執着を表していたのは彼がかつて応援していた横浜ベイスターズである。彼がカッスレやジョイナスレのような背景をもってネタスレッドを生み出したとすれば、その題材はベイスターズ、あるいはベイスーズの選手が選ばれるはずだ。しかしながら彼が生み出したネタスレにはベイスターズの選手は登場しない。

もっとも彼の執着は大したものではない。現にサットレの創始者はベイスターズを見限り楽天に鞍替えしている。愛憎入り混ぜながらベイスターズを応援し続けるのではなく、新天地を選ぼうというポジティブさとドライさが彼にはあった。こんな人間がヘイトを糧に創作をするのだろうか?

ならば、こう考えるしかないだろう。サットレはカジュアルな露悪性を背景に生み出されたネタスレなのだ。創始者の心中には里崎への怒りが少しはあったのかもしれないが、憎まれる余地のない小谷野が巻き込まれた時点で、カジュアルな露悪性に取り込まれてしまっている。

剥き出しの憎悪は見世物小屋の珍獣としてはアリかもしれない。しかしながら、曲りなりにも人に笑いを提供するネタスレとして不適切である。インターネットの汚物で笑いをとろうとするなら、憎悪をスポイルし、カジュアルな露悪性にまで薄めなければならない。

そういった意味では、サットレこそは最初からちゃんとしたネタスレだった。カッスレのように剥き出しの憎悪から生まれたわけでもなく、ジョイナスレのように「高木守道を愛されチンポキャラにしたい」という訳の分からない目的で生まれたわけでもない。サットレはカジュアルな露悪性を通してなんJ民に「笑い」を提供するという目的で生まれ、洗練されていった。

サットレ創始者はおそらく「ウケる」以外のことは考えていなかっただろう。サットレの創始者は「笑い」のために情熱を燃やした。「笑い」こそが彼がサットレを生み出した動機であったと私は結論付けたい。

そのプロセスや良識の欠如は決して褒められるものではないが、「愛憎」といったドーピングに頼ることなく、サットレを独りで創り上げたパイオニアに私は敬意を抱かずにはいられない。顔も名前も知らない人たちを笑わせるために捧げられた情熱に畏敬の念を示したい。

時代は常に移り行く。サットレのような匿名掲示板のネタスレはもはや時代遅れの存在である。今のインターネットは手間暇かけたネタスレよりも、誰でも手軽に参加できる大喜利的なネタの方が好まれる。人々は笑いよりも終わりのない論争に情熱を注いでいる。

たまには思い出してほしい。サットレというおぞましく倒錯的なネタスレのことを。カジュアルな露悪性の内面で燃え滾る名もなき情熱のことを。

*1:彼氏にローターを仕込まれたおもちゃ屋(意味深)の女性が、のど自慢大会で「未来予想図Ⅱ」を悶えながら歌うというネタである。

*2:2017年6月11日放送

*3:西村徳文(現オリックス監督)ではなく、オタク投手として知られる西村健太朗のことだろう