いつからだろうか。マスメディアがネットの反応を記事にするようになったのは。今となっては各媒体が随時更新するネットニュースに"ネットの声"が取り上げられていることにすっかり慣れてしまったが、既存のメディアがまとめブログの物真似をし始めたようで当初はすごく戸惑ったものだ。
まとめブログとネットメディア。"ネットの声"を扱うといえ、両者には大きな違いがある。それは出典元が明白か否かの違いだ。一概には言えないが、まとめブログには出典元が明記されることが多い。どの掲示板のどのスレッドにおける書き込みなのか、ちゃんと分かるようになっている。ところがネットメディアが取り上げるネットの反応には出典元が明記されていない場合が多い。よって3流ゴシップ記事における"ネットの声"が本当に実在するかどうか疑わしい。ひょっとしたらライターによる創作かもしれない。というわけで検証してみた。
結論から言うと、3流ゴシップ記事はネットの書き込みを引用しつつ、捏造している。
これは元欅坂46の長濱ねるについて書かれた3流ゴシップ記事だ。長濱が「透けた衣装の美脚全身ショット」をtwitterで公開し、ファンが大興奮したという内容だ。
以下は記事における"ネットの声"の引用である。
ネット上ではこれに「か、か、かわぃすぎですぅ。なんだか感動しました」「毎度のことながらねるちゃんの着こなしセンスに脱帽です。キレイですよ~」「スケ素材が組み合わされるだけで、なんでこんなにイヤラしく見えるんだろう」「なんという美脚! 肌が白いから黄色と黒の組み合わせがめちゃ映えますね~」などといった声が上がり、垂涎の1枚となったようだ。
記事を読んでいても、これらの"ネットの声"が何処で書き込まれているかがはっきりしない。twitterなのか、Instagramなのか、または5chなのか。もう少し具体的に言及してもいいのではないか。
とはいえ全く推測不可能というわけではない。記事を読む限り、"ネットの声"は長濱のツイートに対する反応だということは明白である。となれば、"ネットの声"は(捏造でないなら)彼女のツイートのリプライ欄に寄せられたものである可能性が高い。よって長濱のツイートを確認した。
「か、か、かわぃすぎですぅ」「毎度のことながらねるちゃんの着こなしセンスに脱帽です」
「あった!」───思わず声をあげてしまった。"ネットの声"は実在する。感激のあまり涙が出そうになってしまった。
しかし何かがおかしい。長濱に寄せられたリプライは3流ゴシップ誌で引用されたものと同じ文言なのだが、明らかな違和感があった。そこで当該の3流ゴシップ記事をもう一度見直してみた。
おわかりいただけただろうか。記事に掲載された"ネットの声"には元のツイートにはなかったセンテンスが付加されている。これは転載元からのクレーム対策と考える。無断転載が明るみになれば、おそらくツイート主から抗議されるだろう。そこで元のツイートに「なんだか感動しました」「キレイですよ~」と付け加えることで、「途中までは文言が一致しているが、記事の方の文章には続きのセンテンスがある。よってこれはあなたのツイートではない。あなたのツイートを転載したわけではないので、私に抗議をするのは筋違いである。」との抗弁が可能になる(可能か?)。
セコい。
しかしである。このセコさこそが3流ゴシップを3流ゴシップたらしめているのではないだろうか。3流ゴシップとはこうしたしょうもないセコさに彩られた芸術ではないだろうか。バカらしすぎて、呆れすぎて、胸が高鳴る。それが3流ゴシップというものではないだろうか。
もう書くことがない。よって最後は偉大な3流ゴシップ誌への賛辞で記事を締めくくりたい。ありがとう週刊アサヒ芸能。*1なんだか感動しました。