ジョイナス最後の戦い

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2021年競馬振り返り

エフフォーリア

【2020-2021世代・重賞馬】エフフォーリア - ジョイナスのカラオケBOX

キタサンブラック以降の中央競馬はメスゴリラ*1たちがセックスアローワンスの存在をいいことにやりたい放題する無法地帯だったが、ようやく強い牡馬が出てきてくれた。

百日草特別を勝った時はピンとこなかったが、共同通信杯でヤバさがハッキリ理解できた。その時は「この馬が世代の中心だ」という実感でしかなかったが、皐月賞の時には「これ三冠馬じゃん」という確信に変わった。そう思ったらダービーでシャフリヤールに負けてしまったのだが、天皇賞秋でコントレイル・グランアレグリアを封殺し、有馬でもクロノジェネシスら粒揃いの古馬勢に完勝。三冠馬級の活躍といって過言ではない。

これからエピファネイア×ハーツクライという配合がたくさん試みられると思うが、そのほとんどが緩慢でジリジリとしか伸びない条件馬になると思う。それぐらい緩すぎる配合なのに、エフフォーリアが3歳春から完成度の高い馬体をしているのが信じられなかった。パドックでエフフォーリアを見るたびに、血統の字面からは想像もできないほど立派なトモに驚かされた。きっと母系のKatiesのおかげなのだろう。Katiesはもはや過去の牝系だと思っていたけれど、令和になって最高傑作が出てきた。これも信じられないことだ。

初年度にデアリングタクト。2年目にエフフォーリア。もはや有力種牡馬として地位を揺るぎないものにしたエピファネイアだが、種付け料1800万円はいくらなんでも高すぎる。一発が大きく、父シンボリクリスエスのおかげで配合がしやすいところが魅力的だが、勝ち馬率やAEIを考えるとかなり強気な値段設定に思える。社台SSからディープインパクトキングカメハメハという2大巨頭がいなくなったので、その穴をなんとか埋めたいという事情があるのだろうけど、ハーツクライステイゴールドでも最高で1000万円あたりと思うとどうしても割高感が否めない。

ステラヴェローチェ

「バゴの最高傑作」というキャッチフレーズと好馬体に惹かれて昨年度のPOGで1位指名していた。それもあって去年はこの馬に強い思い入れを持って競馬を見ていたが、いろいろと現実を思い知らされることになった。

バゴは確かにいい種牡馬だが、しなやかさでディープインパクトエピファネイアに敵わない。ならばHyperion的な粘りで戦うしかないのだけど、残念なことに同世代にエフフォーリアというしなやかで、頑強で、粘り強いスーパーホースが生まれてしまった。

有馬記念では単勝の大口投票があったらしい。「正気かよ」と思ってしまった。エフフォーリアに勝てるわけがない。それはデビュー時からずっとステラヴェローチェを見続けてきた自分には悲しいくらい確信できたことで、残念ながらその確信は妄想でもなんでもなかった。せめて本調子ではなかったクロノジェネシスには先着してほしかったが‥‥。

2022年クラシック戦線

牡馬の中心はイクイノックスだろう。東スポ杯のパフォーマンスはコントレイル程ではないにしても、唖然とするようなものだった。

まさかキタサンブラックが初年度からこんな強い馬を出すとは思ってもいなかった。引退式を見に行くくらいには好きな馬だったが、種牡馬としては「ブラックタイド後継なんて‥‥」と侮っていた。勝ち馬率は最終的に0.267で、騒がれていたほど高打率ではなくなってしまったが、現3歳世代の活躍によって種付け状況は一変するのではないだろうか。

キラーアビリティのホープフルSは暮れの中山であることを考慮すればかなり優秀な時計だ。皐月賞の頃の速い中山の芝ならよりマッチするだろうが、ダノンスコーピオンに標的にされてしまった萩ステークスを思うと府中2400は難しいかもしれない。

あとは‥‥めんどくさいのでまたの機会に。

細江純子

昨年末に公開された細江純子のインタビュー。すごくいいことを言っていた。

 競馬といえば血統を知ることこそ重要というイメージがあるが、細江は「血統を知らなくても競馬を楽しむことはできる」と断言する。

「血統は、ある程度の年月競馬をやっているか、初心者ならよほど勉強しないと把握するのは難しい。『競馬やるなら血統を知らないと』というのは、もっともな意見ではあるのですが、それが競馬へのハードルを上げてしまっている気がします。

 それよりも、馬の個性やキャラクター、そこに人間がどのようにかかわっているのかという点に私は面白みを感じてきました。

血統を覚えることが競馬へのハードルを上げてしまっているというのは同感だ。自分は競馬を見始めるようになって2年くらいで血統に興味を持ち、それから独学で勉強したが、体系的に理解できた*2と実感できるようになったのはそれから3年くらい後のことだった。

どの馬がどの馬の産駒か、といったことはその気になれば誰にでも覚えられることだけど、「〇〇産駒は××に強い」といったような血統論となると細江のいうようにハードルが高いと思う。血統論は人によって言うことがまちまちで、科学的根拠があるわけでもなく、「データの裏付け」があったとしても統計としては信憑性が薄い藁の家ばかり。率直に言えば、血統を学ぶということは何が正解で何が間違いなのか分からないものを学ぶということであり、血統を理解するということは、こうした血統論の不確実性を承知したうえで、「自分の血統論」を体系化することに他ならない。不毛だといわれれば否定できない。

だから血統ではなく「馬の個性やキャラクター、そこに人間がどのようにかかわっているのかという点」にまずは着目したほうがいいという細江の主張は納得しかない。「〇〇の仔だから」とかという言葉抜きに、私たちは1頭の馬を理解することができるし、愛着を抱くこともできる。そのことは忘れないようにしたい。

さようなら岡田繫幸

自分は岡田繫幸というホースマンが大好きだった。

とはいえ総帥*3が偉大なホースマンかと言われると、口を噤んでしまう。社台の吉田善哉とその息子の照哉・勝己兄弟、シンボリの和田共弘メジロの北野豊吉・ミヤ夫妻といった歴史的なオーナーブリーダーたちと同列に並べられる人だとは正直思わない。

それでも私は総帥のことが好きだった。大きな口を叩いては失敗し、そして懲りずにまたラッパを吹く総帥のことが好きだった。我々競馬ファンから失笑を買い、呆れられながらも、あっと驚く結果を残し、競馬ファンを見返す総帥が好きだった。詐欺師のような口調で競馬を熱く語り、我々を楽しませてくれる総帥が大好きだった。

ユーバーレーベンは総帥のホースマンとしてのこれまでの人生を集約させたような馬だった。

ユーバーレーベンの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

牝祖はマイネプリテンダー。総帥が南半球で購入した馬で、現役時代は1勝に留まったが、繁殖としては今やビッグレッドファームの看板ともいえる牝系を築き上げた。母父ロージズインメイサンデーサイレンスに対抗して導入されたHalo系種牡馬で、お世辞にも成功したとも言い難いが、BRFの繁殖のレベルアップに貢献した。そして父ゴールドシップは言わずと知れた名馬。その柔らかい体質に惚れこんだ総帥が三顧の礼ステイゴールドの後継種牡馬としてBRFに導入した。ステイゴールドも総帥がサンデーサイレンス後継種牡馬として見出した馬で、総帥の慧眼を証明するように名馬を次々と輩出した。こうした血統を背景に産まれたユーバーレーベンは岡田繫幸のここ20年の歩みそのものだった。

そんなユーバーレーベンが府中の直線で抜け出し、同馬の勝利を確信した瞬間、私は声を上げて泣いた。ユーバーレーベンがこれからオークスを勝つというのに、総帥がもうこの世にいなかったからだ。

競馬をこれまで見続けて、目頭が熱くなるようなレースは何度か体験した。しかしながら、競馬を見て自分の中でタガが外れたように涙が流れた経験はなかった。ユーバーレーベンが勝ったのに、岡田繫幸がいない。吉田善哉喜劇役者コメディアンと呼ばれた男が、最後に残したのは悲劇だった。「総帥がユーバーレーベンの背中を押してくれた」と人は言うが、それは残された私たちを慰めるだけの言葉でしかなかった。

ユーバーレーベンとは独語で「生き残る」を意味する。悲劇と共に、岡田繫幸の名前とビッグレッドファームが末永く生き残ることを祈り続けたい。

*1:男性器があるというだけでメスゴリラたち相手に不当なハンデを背負い、辛酸を舐めさせられたインディチャンプやフィエールマンのことを思うと涙が止まらない

*2:いうのも烏滸がましいけど

*3:岡田繫幸の愛称