ジョイナス最後の戦い

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true tears主人公・仲上眞一郎とかいうヘタレクズおんぶ野郎を再評価しよう

なぜアニメや漫画の男主人公はモテるのか。

多くの人がこんな疑問を一度は抱いただろう。 

当然その中にはモテる理由が納得できる主人公もいれば、納得出来ない主人公もいる。中でも僕が一番モテる理由が分からなかった主人公がtrue tearsの仲上眞一郎。

この男はモテる。作中では石動乃絵、湯浅比呂美、安藤愛子と三人の女子から好意を寄せられている。しかしながら仲上眞一郎という男はヘタレでクズである。彼がヘタレでクズであるが故に生まれた物語がtrue tearsと言ってもおかしくはない。それ故、仲上眞一郎がモテるという事実がどうも受け入れられなかったのだが・・・

 



冷静に考えると仲上眞一郎がヘタレでクズというのはあくまでも視聴者視点での印象でしかない。そこには乃絵らヒロイン達の視点が欠けている訳で、彼女らの視点を配慮せずに「仲上眞一郎がヘタレでクズなのに女にモテるのは意味が分からない」と喚くのはフェアではない。僕は仲上眞一郎のヘタレでクズという一部分だけしか見ていないのだ。まさに「何も見ていない私の瞳から・・・」状態だ。
というわけでここ一年くらい「仲上眞一郎を再評価しよう」と、各ヒロイン視点で仲上眞一郎のモテポイントをいろいろ考えていた。

湯浅比呂美に関しては「子供の頃に祭りではぐれたときに見つけてもらった」ことが比呂美の眞一郎への好意の構成ポイントとして随所に描かれている。両親を失った比呂美は両親と親しかった仲上家に引き取られる。両親を失った比呂美がすがったのは自分を「見つけてくれた」眞一郎だった。作中はヘタレとしての印象が強い眞一郎だが、比呂美の中の眞一郎は自分を「見つけてくれる」頼りがいのある男性なのだ。

安藤愛子の眞一郎に対する好意はよく分からないことが多い。眞一郎の側に居続けるために、眞一郎の親友三代吉の彼女になるくらい眞一郎のことが好きだというのは分かるのだが、何が彼女の眞一郎に対する好意を形成しているのか、明確な理由は作中描かれていない。こういうところが空気ヒロイン扱いされる所以なのかもしれない。

仲上眞一郎がどんな人間なのか、ということを再確認するにあたり一番参考になったのが石動乃絵の視点だった。
そもそも乃絵にとって眞一郎は死んだニワトリ・雷轟丸の代わりでしかなかった。雷轟丸の代わりに「飛ぶ」存在として眞一郎は乃絵に見出されたのである。
なぜ乃絵が眞一郎を見出したのか。なぜ眞一郎のことを「飛べる」と乃絵は思ったのだろうか。
乃絵は1話で眞一郎に「呪い」をかける。その後眞一郎は絵本の選考に落ちてしまい、「呪い」を信じた彼は「呪いを解いてくれ」とティッシュ箱で作ったニワトリを持って乃絵に会いに行く。乃絵が眞一郎に「あなた、飛べるわ」と言うのは、この後のことである。
このわずかのやりとりのうちに、乃絵に「飛べる」と思わせるような言動を眞一郎はとったわけだが、乃絵に眞一郎が再び会いに来たこと自体がそれにあたるだろう。
乃絵は変わった子である。それ故に誤解されることも多い。比呂美にいたっては乃絵のことをふしだらな娘と思っていたくらいである。当然、友人と一緒にいる描写もラストシーンを除けばない。7話で乃絵は比呂美と取っ組み合いの大げんかをする。その後に比呂美に対して「私とちゃんと喧嘩をしたのはあなたがはじめて」と比呂美を見直す意の発言をする。喧嘩をしてくれた相手すら乃絵にはいなかったのである。明言こそされてはいないが、乃絵はアンタチャブルな存在だったのではないのだろうか。自分と喧嘩してくれた比呂美を見直す乃絵である。自分に再び話しかけてくれた眞一郎に興味をもつのは当然と言える。また、眞一郎に対する漠然とした好意が形成されるのもおかしくない。そう考えると、眞一郎への「飛べる」発言の裏には「自分に再び話しかけてくれた眞一郎が『飛べる』人間であってほしい」という乃絵の願望が隠れているのかもしれない。

「仲上眞一郎は『あなたに不幸が訪れますように』と初対面で言ってくるような、アンタッチャブルな女の子でも気にせず接することのできる度量の広い男」と思えば、クズでヘタレの仲上眞一郎の違う一面が見えてくるのではないのだろうか。