ジョイナス最後の戦い

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[ジョイナス(Chimpo_Joinus)が選ぶアニメ・オールタイムベスト10]8位:さらざんまい

8:さらざんまい(2019)

幾原邦彦作品はどれもけっこう好きなのだが、格別好きというわけでもなかった。

面白いと思いつつもどこか心を許し切れないのが、天上ウテナも高倉兄弟も椿輝紅羽も結局最後は消えてしまうからだろう。自己犠牲が美しく尊いものだということは否定しない。ただ、死にたくないから生きてるような私は、命を賭けるほど尊いものよりは、生きることそれ自体に価値があると思わせてくれるようなものが見たい。

そう思っていたので「さらざんまい」は衝撃的だった。私は目を疑ってしまった。この作品では「自己犠牲なんてダセえことすんな」という幾原にとって自虐的なセリフがこだまする。もはや「リンゴは愛の為の死を選んだものへのご褒美」という幾原邦彦は過去のものなり、「生存戦略」は人と人とのまるいつながりの中に幸福を見出すという方向にアップデートされた。ベタな方向性ではあるが、私としてはこちらの「生存戦略」の方が以前のものよりよっぽどか好きだ。

変わらなかった部分もある。イクニらしいメタフォリカルな表現と、お決まりの変身バンク、迸るバカバカしさはこれまで通り。全11話という短さだけがもったいない。2010年代の最後を締めくくるに相応しい快作だった。

イチオシの回:「つながりたいから、さらざんまい」(11話)

感動的な最終回だ。それでいてとてもバカげている。

黒幕のカワウソは「私は概念」と嘯くし、悲劇的な死を遂げて腐女子たちを泣かせたレオとマブも当たり前のように復活する。そして唐突にサッカー選手になった主人公トリオの姿が描き出される。見れば分かる。困惑する内容だ。しかしながら、私としてはとても気持ちいい困惑だった。

橋の上で繰り広げられたのは、つながりを求める主人公たちとつながりを絶ち、欲望を搾取しようとするカワウソの戦いだ。そして「つながりたい」という欲望がカワウソに勝利する。

この作品における欲望は切実なものだ。それでいてバカげたものである。燕太の妄想やカパゾンビにされた変態たちのどうしようもないフェチ願望に呆れなかった視聴者はきっといないだろう。でも最後に勝利したのは欲望だ。バカげた欲望が、歌って踊って尻子玉を抜くというバカげた方法で勝利したのだ。視聴者の困惑は「さらざんまい」がバカらしさを貫いた証なのだ。

バカげた欲望の勝利。バカらしさの貫徹。これも「生存戦略」が自己犠牲からアップデートされた結果の一つだろう。繰り返すが、私はこちらの方が断然好きだ。