ジョイナス最後の戦い

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[ジョイナス(Chimpo_Joinus)が選ぶアニメ・オールタイムベスト10]9位:カードキャプターさくら

 9:カードキャプターさくら(1998)

カードキャプターさくら」は愛が魔法を凌駕する作品である。劇場版「封印されたカード」の結末は最たる例だ。必ず最後に愛が勝つ。

愛や正義と言った道徳的に優れているものが勝利する。これは本当に気持ちがいいものだ。私たちは物語の中で、私たちの信じるイデオロギーが報われるだけで、救われた気になってしまう。

しかしである。こう疑問に思ったことはないだろうか。本当に勝ったのは愛や正義なのだろうか?身も蓋もないことをいえば、勝つのは全て強者だ。ただ強者に道徳的な優位があったにすぎない。「カードキャプターさくら」とて、こうした疑義の対象外にはならないだろう。

ただ「カードキャプターさくら」は愛が勝つところだけを描いた物語ではない。「愛は強い」ということを示した物語なのだ。この作品は多様な愛の形*1を描くことで、愛の力に説得力を与えている。とりわけ「好きな人の幸せが私の幸せ」と言ってのける大道寺知世の愛は呪いも宿命も泣いて逃げ出すくらい力強い。知世が愛する桜も「私もね、雪兎さんが幸せなら、それが一番うれしいなぁって思ったの」と失恋を受け入れる。愛のせいで狂う人間もいるのに、「カードキャプターさくら」のキャラクターは愛によって成熟する。こんな調子の作品だから「最後に愛が勝つ」ことに疑問を呈するのは野暮でしかないだろう。

イチオシの回:「さくらと小狼とエレベーター」(第57話)

私が一番作中で楽しんでいたのは李小狼の恋模様だ。

彼の恋愛遍歴はなかなか特殊である。香港から日本にやってきた小狼月城雪兎に惚れてしまう。その理由は「雪兎の月の魔力に惑わされたから」という「ほえ~」と言いたくなるようなもの。雪兎は大魔術師クロウ・リードによって創られた存在だ。要するに、本作の黒幕クロウ・リードの魔力はノンケの小狼性的指向に影響するくらい強大だということだ。

しかしながら、彼は次第に桜を意識するようになる。クロウの魔力がもたらす超越的な恋が、小学生の甘酸っぱい恋愛に屈していくのである。ここにも私たちは愛の魔法への勝利を見出すことができる。

桜のことが気になるようになり、「俺が好きなのはあの人(雪兎)なのに」と戸惑う小狼の姿はとてもかわいらしくて面白い。そして生意気だった彼が桜への恋心を自覚した途端、どんどんと紳士的になっていくのも面白い。どちらも面白いが、個人的にはまだ戸惑っている時の方が好きかもしれない。

そういう意味で、小狼が桜への想いを自覚する「さくらと小狼とエレベーター」が一番の私のお気に入りだ。劇中で小狼のキャラソン「気になるアイツ」が丸々流れ、桜を気にする小狼の様子がMV仕立てで描かれる。恋する小僧をニヤニヤしながら楽しめる最良の回だ。

*1:兄弟愛やら同性愛、果てには生徒と教師の禁断の関係まで