ジョイナス最後の戦い

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2022年11月第1週 —若者にいい格好がしたいオジサン―

今週もうさ太郎先生*1リスペクトでブログを書く。

 

今からおよそ10年前、「一度ギャンブルをやってみたい」という理由ではじめて競馬場を訪れた私は、ウオッカ像の近くで見知らぬオジサンに声をかけられた。競馬新聞を脇に抱えたオジサンは初対面の私に私にいろいろと競馬の蘊蓄を語り、「じゃあパドックに行くからな」と去っていった。彼の言ったことはほとんどその場で忘れてしまったが、一つだけ覚えていたことがあった。後藤浩輝という騎手が吉田豊という騎手を木刀で暴行したというゴシップだ。

競馬場から帰ってきた私は、すぐさま吉田と後藤のことを調べた。吉田の騎乗するゴーステディと後藤の騎乗するローエングリンが互いにハナを譲らず直線まで競り合った2003年の天皇賞・秋を知り、YouTubeの無断転載動画を見た。因縁のある2人が勝利を度外視して意地を張り合うあまりにも人間的な有様に、強く興味を惹かれた。

吉田豊後藤浩輝ゴーステディローエングリン。これが私の競馬のスタートラインだった。その日のレースでなく、過去のレースが、冷やかし半分で競馬場に脚を踏み入れた私と競馬の縁を繋ぎとめたのだ。

私に語りかけてきたオジサンの存在も忘れてはならない。あのオジサンがいなければ、私は競馬を続けていなかったかもしれない。競馬場には彼のように(大人しそうな)若者に声をかけ、蘊蓄を語ったり、レースの狙い目を教えてくれるオジサンたちが存在する。もし声をかけられたなら、彼らの言葉に耳を傾けてあげてほしい*2。鬱陶しいかもしれないが、彼らはただ若者たちにいい格好をしたいだけなのだ。今の自分にはその気持ちが分かる。

あれから10年。吉田豊はパンサラッサという相棒と共にG1戦線に戻ってきた。若者にいい格好がしたいオジサンの気持ちがだんだんと分かるようになってきた私は、パンサラッサの狂気じみた逃げを見るたびにゴーステディの姿を重ね、後藤浩輝がいないことを寂しく思ってしまうのだ。

 

  • 今週聴いた音楽

ハイファイ新書(Bメロ) / 相対性理論 

不標準情人 / 雀斑

There's a Riot Goin' On / Sly & the Family Stone

Hotter Than July / Stevie Wonder

Strange Boutique / The Monochrome Set

雀斑(Freckles)は台湾のバンド。山下達郎角松敏生の影響を受けたらしく、「不標準情人」(2017)はいかにもシティポップといった内容になっている。シティポップ・ブームを知った時、「本当にそんなものがあるのか?」と懐疑的だった。こうして海外のフォロワーが出した音源を実際に聴いてしまうと疑ってごめんなさいとしか言いようがない。シティポップ・ブーム以前に作られた「我不懂搖滾樂」(2007)もよかった。

*1:良寛コーヒーだ・コーヒー どうしておまえがこんな所に……・日本の宝

*2:ヤバそうな人だったら緑服の係員に助けてもらおう。